-------- --:-- | カテゴリ:スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2009-04-28 22:34 | カテゴリ:北森 鴻
桜宵'03年4月刊
 世田谷にあるビアバ-《香菜里屋》シリーズの2作目。雰囲気も落ち着いていて好きな作品群のひとつ。回想シーンで状況を説明するパターンが多いので動きもあまりない。
 表題作のモチーフになっている御衣黄(花が薄緑色の桜)が隣りの市の公園にあるのを知って初めて見た。それを知ったのも新聞のコラムにこの作品と一緒に取り上げられたから。遠目で見ると葉っぱと同化してよく分からなかった。ここで取り上げられている御衣黄はもっと見ごたえがあるのかな。

(あらすじ)
(十五周年)
 《香菜里屋》のカウンターで、10年近く音信不通だった職場のバイトから突然結婚式の招待状が来たため出席した人の話を聞いていたタクシー運転手の日浦は自分の体験と重ね合わせていた。
 日浦は故郷花巻でかつて常連だった小料理屋《千石》の娘夕海から十五周年記念パーティーの案内をもらい訪れるが、5年も故郷を離れていた自分がなぜ招待状をもらったのか分からなかった。
 そのパーティーの4ヶ月後夕海が自分の母親初美が昏睡状態になり目が覚めた初美が日浦を連れて来いと言ったと日浦のアパートを訪れる。
 日浦は初美に自分の疑問をぶつけ、パーティーは《万鉄》の閉店15周年だったのではないかとの問いに初美は頷く。《万鉄》は骨董品を飾った居酒屋で不審火から店を潰した。初美はそこの亭主の妹だった。万鉄五郎という偉大な洋画家から名を取ったその店には中村つね作と思われる絵が飾ってあることを知らされた日浦は花巻に帰りそのことを当時の客一人ひとり聞いて回った。すると中村の絵を売りたいと言う人物が現われる。その人物は謝り初音にその絵を返すと言う。
(桜宵)
 刑事である神崎は1年前に他界した妻の手紙に記されていた最後のプレゼントという言葉に《香菜里屋》を訪れる。そこで出た桜飯に妻が作ってくれていた薄緑色の桜飯を思い出す。
 神崎は5年前に被疑者に関係する高任由利江を監視していた。4月半ばに薄緑色のワンピースに身を包んだ由利江は公園の御衣黄の下のベンチで3日間一日中座っていた。その3日目に酔客に絡まれた由利江を神崎は助ける。二人が出会って3年間その場所で二人は会ったが4年目の去年妻の芙佐子が亡くなり会うタイミングを逃す。3年目の春、神崎は由利江を抱いていた。妻からのプレゼントとは薄緑色の桜飯であり、由利江との関係を知っていた妻の復讐と感じる。
 由利江は御衣黄の季節に誰に自分の姿を見せようとしていたのか、どうして芙佐子は由利江の存在を知ったのか、なぜ最後の復讐を《香菜里屋》に託したのか神崎は疑問を抱く。二人で過ごした夜、由利江が「とうりゃんせ」を口ずさんでいたことを思い出す。
(犬のお告げ)
 修はリストラにあったかつての上司金村から会社がリストラ要員を選ぶ際のある噂が流れていることを聞く。湯浅人事部長のホームパーティに招かれた際テツマルと名付けられた室内犬が腕に噛み付いた人物がリストラにあうというものだった。修はそのホームパーティに招かれたがテツマルが急死したためパーティはお開きになる。その後湯浅が夫人に刺されるという事件が起きる。
(旅人の真実)
 《香菜里屋》へ「金色のカクテルをください。」と言って30過ぎの男が入ってくる。工藤はないと断ると「バーと言っても名ばかりか」と漏らす。その場に居合わせた飯島七緒は他のバーでもその男を見たことがあった。工藤は《バー香月》を紹介する。
 翌日《バー香月》のマスター香月圭吾が《香菜里屋》を訪れる。昨日の男は同様のことを言って店を出て行ったが香月はあの男は金色のカクテルを飲んだことがないと断言する。
 その後七緒は《バー香月》を訪れ、あの男が2度来て最後に飲んだカクテルに満足したことを聞く。その男は広末と言って恋人がバーマンであり、オリジナルカクテルのコンテストに出場するのに金色のカクテルを作る協力をしていた。しかしその翌朝広末が殺されたことが新聞で報じられる。
(約束)
 日浦が花巻へ帰って2年目の年末、工藤は店を休むことになったので《千石》を訪ね厨房を手伝う。閉店間際、一組の男女が前後して来店する。日浦は女性有希江に負の感情を読み取り、また男性はベストセラー作家の土方洋一と分かる。学生時代二人はこの店を訪れ10年後にここで再会しようと別れたという。
 土方は学生時代たまたま参加したデモのために就職先が見つからず有希江と別れる。仕事を転々とするが何とかフリーライターになり事務所を立ち上げ結婚もしたが事務所のライターとデザイナーが独立したことにより事務所は解散に追い込まれる。その後離婚したが有希江を思いながらベストセラー作家になる。
 一方有希江は本来二人で分かち合う不幸を土方が背負ってくれたらと思い生きてきた。土方の不幸を知るたびに自分が幸せになっていることを確認してきた。土方が事務所を開き結婚したことを聞いた有希江に義母の介護と遠距離通勤という不幸が舞い込んだと思い、土方の不幸を聞いた時義母の死により東京へ戻ることができ幸せが訪れたと考えた。
 工藤は一言も発せず料理に濃い調味料を入れる有希江の手元を見ていた。有希江は夕海にタバコを工藤にもう1品頼むと工藤は「私が厨房に消えたらマスターにどのような注文をつけるのか。」と聞く。
(ネタバレ)
スポンサーサイト
【ジャンル】:小説・文学 【テーマ】:ミステリ
| トラックバック(0)
2009-04-11 00:38 | カテゴリ:ミステリー
検察審査会の午後 (光文社文庫)'94年5月刊
 教員佐田章は検察審査員の補充員に選ばれる。検察審査会とは検察官が不起訴の処分を下した事件に関しそれが妥当かどうかを審査する機関である。検察審査会は起訴、不起訴の妥当性を審査するため必ずしも事件の解決を見ることはない。
 裁判員制度は話題になるけどこれは聞いたことがないな。自分はもちろんやったなんて人は聞いたことがない。
 かつての教え子で雑誌記者の米山がすでに検察審査会の審査員に選ばれており折に触れ検察審査会での話をする。15年前に自分の人生を変えた栃尾素子に似た笑い方をする小淵沢妙子という女性と出会う。かつて不倫から人生が変わった佐田と小淵沢の微妙な関係が話が進むごとに変化していくのが心地よい。
(落ちてきた義務)
 最初の申立て事案は喫茶店を経営する白田かね子が税務署員から家宅捜索を受け長時間に渡り寝巻き姿を見られたこと、及び家計簿を取られ1週間後に返されていたことに対する職権濫用に関する案件だった。
 審査会で米山は、白田の喫茶店「白帆」の名前は懇意にしている帆田源一郎の名前から取ったことを聞き出す。小淵沢妙子はその家計簿から無くなった物はないかとの質問し白田は写真がなくなったと答える。
 税務署員の森本に対する質問で、森本は下着の中に何か隠されると困るので下着をつけさせなかったと答える。
(消えた指紋)
 ホテルの一室で町の農政課長をしている沢田幸吉が脳内出血で死亡しているのが発見された。沢田は女性と会うために偽名を使ったと推測された。新聞がその事件を報じた翌日相手の女性真鍋真澄が名乗り出る。真鍋が部屋を出た後に沢田が亡くなっていたと見なされ不起訴となったが、被害者の妻から「遺棄致死被疑事件」として申し立てられる。
 小淵沢にも似た経験があり、かつて世話になった会社の社長と関係を持った際、頭痛がするから早く帰れと言われたが妙子は救急車を呼び社長の命は助かったが半身不随となった。これが元で交通刑務所に入っていた夫と離婚することとなった。
 事件当夜、県会議員の中村と名乗る者から電話があり約束しているので寝ているはずがないと様子を見に行ったところ亡くなっていた。しかし中村に確認したところそんな電話をかけてはいなかった。
 根本警部補の証言から現場には真鍋の指紋がなかったことが明らかになる。
(効きめのない祈り)
 風邪で審査会を休んだ佐田を小淵沢が見舞いに訪れ審査会の話題になる。ぼけ防止のお守りに20万円払ったがぼけは進行したため詐欺であるという訴えであった。
 訴人の話によると母親の通帳から20万円が引き下ろされており何に使ったか問い合わせたところ、お寺に渡したと言う。寺に確認したところ受け取っていない、ぼけたのではないかと言われたとのことであった。お寺の娘である靖代によると迷子札をヒントにぼけ防止お守りを作ったのだと言う。20万円については受け取っておらずよその寺にしても高すぎると証言する。
(毒入りだんご)
 大和田貢が愛犬「バーディ」が散歩中に道端のだんごを食べた後死んだのは、以前犬のことで口論になった並木龍太郎が毒殺したものだという告訴に対し証拠不十分で不起訴になった件であった。
 小淵沢らは大和田と並木の狂言を疑う。妻の治美がフィリピン男性と付き合っている事を知っていた委員の安永の話から、小淵沢は大和田がそのフィリピン男性を殺し庭に埋めたが犬に気付かれるのを恐れて殺したのではないかと疑う。
(心停止時刻)
 M町の町長選挙で前職の前島和也が投票日に亡くなる。死亡診断書では投票開始時刻を過ぎた時間の死亡だったため規定により再投票が行われることとなった。投票開始前であれば相手候補の無投票当選となるためジャーナリストの谷村陽一郎は診断書に嘘があると告発した。谷村は他に消防署の記録に出動要請時刻が6時9分だったこと、診断書を書いた松宮医師の向かいの住人が7時に頃出たと証言しており死亡時刻の7時13分には時間がなさ過ぎ、ただ診断書を書かされたのではないかと疑い、申し立てていた。
(紐がからむ)
 佐田の教え子で新聞記者をしている安藤が審査会について聞いてくる。
 事件はひき逃げでひいた車は綱原代議士の車だったが出頭してきたのは私設秘書の庭野だった。被害者は名乗り出た犯人を「証拠隠滅の容疑」で告発するが不起訴となった。被害者が庭野が犯人ではないと言ったのは自分をはねたのは女だからだと言う。
(盗まれた音)
 佐田は小淵沢の任期が切れる前に自分の想いを告白しようとしたができないまま時間が過ぎてしまう。そんな時米田から、小淵沢が入院したとの電話が入り二人で見舞いに行く。
 隣室のOL保坂沙織からもらったぬいぐるみに盗聴器が仕掛けられていて夫婦の生活を盗聴したとして告発したが住居侵入もなく財物も取られていないということで不起訴となっていた。また保坂も盗聴器については覚えがないと主張していた。
(深夜の刑事)
 予備校生の川本広哉は夜、警官から職務質問を受け肩を叩いた警官の手を払いのけたことから逮捕されたことに職権濫用罪で告発したが不起訴となっていた。職務質問をしたきっかけが川本がマンションを見上げていたためであったため実地検分が行われる。川本はそこに知り合いがいると供述していた。
 補充員から補欠の審査員に選ばれた栃尾は佐田に今回の事件について問いかける。佐田はかつて自分の人生を変えた女性と同じ姓の栃尾に危惧するが話していくうちに確信に変わる。しかし7年前に自分の時と同じケースで相手の奥さんから刺されて亡くなることを知る。このことを小淵沢に話すが途中で電話を切られてしまう。
(ネタバレ)
【ジャンル】:小説・文学 【テーマ】:ミステリ
| トラックバック(0)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。