
'03年2月刊
失踪した夫の探偵事務所を引き継ぎ、素人ながら探偵業を始めた下澤唯。夫を探し求めながら依頼人の調査を通し男と女の関係を自分の姿と重ね合わせる連作短編集。
最初の数編はありがちな女性探偵の話として読み進めたけど「夢の砂」、「遠い陸地」あたりでそれまでとは違った生々しい女性の内面が描かれる。ひとりぼっちの十年という歳月について「・・・男の汗の匂いや、・・・そうしたものを愛撫したいと願うことは、当たり前のことなのだ。」(「遠い陸地」)等々。そういうトーンじゃなかったところへもってきてそういう内面を吐露するもんだから少しドキドキする。
「観覧車」
唯の下に行方不明になった夫遠藤祐介を探して欲しいという依頼がくる。手がかりは遠藤の部下で愛人と噂される白石和美だった。和美を尾行して2週間、和美は日がな八瀬遊園の観覧車に乗り一日を過ごすだけであった。遠藤が勤めていた会社で脅迫事件に関与していた疑いが浮上し唯の友人で刑事の兵藤も捜査に動き出す。
「約束のかけら」
神保登喜子は息子功の嫁桂子の浮気調査を唯に依頼する。桂子がホテルに入るのを確認し相手が工務店を営む佐田慎一郎だと調べ上げる。証拠のビデオを登喜子に渡し依頼は終了するがビデオを消してしまったと登喜子が再度依頼に来る。唯が密会ビデオを撮影した日、絞殺死体となって佐田が発見される。
「送り火の告発」
人気女優相澤ミナミは婚約者友沼章二が愛人を囲っていると疑い唯に調査を依頼する。その事実が確認され婚約が解消される。その一年後章二の弟武男が遺体で発見される。相澤のマネージャー田上美代子は相澤のアリバイを証言する。
「そこにいた理由」
妻多喜子の依頼により六十を過ぎた蓮沼正治の浮気調査をする唯。浮気の事実がありその報告をした一年後再度多喜子が訪れ浮気が再発したと調査を依頼する。小料理屋でかつての浮気相手高沢真知子と会う場面に遭遇する。二人が交わした「ついたちに行こうかな」の言葉に唯は二人の約束事を感じ、6月1日のその日に蓮沼家の前に立つ。唯は出てきた正治の後をつけるが正治は途中倒れこんでそのまま息を引き取る。しかしその日は真知子が別の男と結婚する日で正治と会う約束をすることはないと言う。
「夢の砂」
唯が同業者の川崎多美子から回された仕事は名門女子高校に通う菅原由紀恵の捜索だった。由紀恵は婚約をしていながら好きな人ができたと家出をしたのだった。その相手が後藤啓一だと突き止め足取りを追って新潟まで来る。しかし後藤のアパートに由紀恵はいなかった。後藤を尾行して佐渡汽船まで来た時唯は夫貴之の姿を見かける。後藤と接触する内に後藤から砂山を見に行こうと誘われる。唯が由紀恵を探していることを知ってる上でナイフをつき付け砂山をめざす。
「遠い陸地」
貴之を探しに新潟へ再訪する唯。貴之探しの依頼を受けた川崎多美子はかつて貴之が裁判の被告人を調査したことがありその女性渋川さわ子が佐渡出身であることを調べ上げる。佐渡へ渡った唯はさわ子が入院していたこと、娘がいたことを調べ出す。
多美子はホームレスが転倒死した事件の記事をみつけ貴之の失踪と関連があることをほのめかす。
一方唯は今津慶子という女性から恋人の浮気調査を依頼される。
(ネタバレ)
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