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'77年刊(文庫版)
 仁木悦子、雄太郎兄妹が登場する短編集。妹の悦子が駆けずり回って兄の雄太郎が冷静に推理するっていうパターン。「猫は知っていた」もそうだったけど部屋の間取りだとか建物の配置とか図入りの作品がよくあった(「黄色い花」、「弾丸は飛び出した」)。子供視点の作品も特徴かな(「かあちゃんは犯人じゃない」)。特別密室にこだわるわけじゃないけどそれっぽいのが多かったし、犯人しか知らない事実で犯人を見つけ出すパターンから言えば乱歩っぽいのかな(おどろおどろしさはないけど)。
「かあちゃんは犯人じゃない」
 10歳になる和夫は母親と義理の父親高倉平造の3人暮らし。母親は、シャボン(そんな言い方もうしないね)を使うなとか些細なことで怒る平造に嫌気をさし別れるとこぼす。平造がいびきをかいて寝ている隙にシャボン玉を作るためにシャボンを取りにいくが人の気配を感じ隠れているうちに平造は殺されてしまい、母親に疑いがかかる。家へ忍び込んだ和夫は誰かが部屋を物色する場面に遭遇する。ふとポケットの中のシャボンから3個のダイヤモンドが埋め込まれているのを見つける。
「灰色の手袋」
 雄太郎が間違えてクリーニングを取ってきたと悦子は取替えに行くが中では炊事婦のトヨノばあさんが縛られて殺されており、金庫の金がなくなっていた。クリーニング屋の主人がトヨノと組んで仕掛けた狂言だったが殺されたことも金を盗まれたことも予想外の出来事だった。
「黄色い花」
 ある日の昼下がり、仁木悦子、雄太郎の家の隣から悲鳴が聞こえ数川浩助が飛び込んできた。叔父の八郎助が殺されているという。そこでは姪の青田松子、甥の徳見慶吾、女中の上村のぶ枝が暮らしていた。殺された現場に活けられていた黄色い花が朝のぶ枝が活けたものと聞いて雄太郎はあることに気がつく。
「弾丸は飛び出した」
 歯医者の待合室でTVドラマを見ていた悦子はTVの銃声と共に外で人が撃たれる場面に遭遇する。待合室にいた尾形郁子を家まで送り、手がかりに一緒にいた若者を探し出したところG.Lチェスマンという外人と暮らしていることを聞きつける。しかしその外人は銃をもった女性のポスターの前で撃ち殺されていた。事件について郁子に話を聞こうとした途中郁子の家であった正岡という男性に会い、郁子もやってくるが郁子をかばい正岡が銃で撃たれる。そこには拳銃を持った映画のポスターが貼られていた。さらに郁子の同居人町子が銃を持った人形の前で撃ち殺される。
「粘土の犬」
 会社の金を使い込んだ井ノ口は埋め合わせに付き合っている中田安枝に店の手付けとだまし金を準備させ殺害する。その時目の見えない4歳の息子利彦が起きてきた。安枝に覆いかぶさった状態のまま俊彦は井ノ口の手から腕にかけて触れるが井ノ口は声を出さずその場から逃げ出す。4年後、安枝の母親と妹に会い一緒に利彦の粘土細工が出品されている展覧会場へ行く。そこには犬の上に六角形のものが乗っている粘土細工が飾られていたが、利彦はそれは母親で上に乗っかっているのが犯人だと言う。
(ネタバレ)

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'81年刊(文庫版)
 江戸橋本町の裏長屋に巣くってるものもらいや大道芸師達は雨の降った日は稼ぎはできないため、のたのた寝てくらす事から名付けられた「なめくじ長屋」。
 住人にはマメゾー、カッパ、ユータ、テンノー、ガンニン、アラクマ、オヤマがおり辻に色とりどりの砂で砂絵を描く正体不明の「センセー」と呼ばれる砂絵師がなめくじ長屋の住人が集めてきた不思議な話を金や人のために謎解きをする。
 一度たけしとたけし軍団でTVで映像化されたことがあった。イメージ的にはセンセーは石坂浩二(古い?)かキムタクでもいいかな。

「よろいの渡し」
 金物屋の女隠居が殺されその手口から下手人として髪結いくずれとその幼なじみの人魂長次が浮かぶ。長次が旅じたくで出かけたため檜物町の源七と富島町の房吉がその後をつけ鎧の渡しに乗り込むのを見届ける。途中女が素っ裸で川へ飛び込む騒ぎがあり、その後長次が船から消える。
かっぱがそれを聞きつけてセンせーに知らせ、舟で飛び込んだ女お連が長次とのつながりがないこと、源七も房吉も長次をゆくえを追わなかったことを聞き、めぼしをつける。

「ろくろっ首」
 マメゾーが客から投げられた風呂敷包みと繭玉を手玉にとって回してると風呂敷包みから男の生首が現れる。その生首は塩漬けにしてあり、その額には見慣れぬ文字が記されていた。岡っ引にセンセーは信州の山住み者が使う符丁で復讐を意味するものだと答える。その事件の前に首なしの女性の死体が発見されていたが、それは男でマメゾーがおっつけられた首はその死体のものだった。死体は紙問屋の跡取り息子時太郎で妹おのぶには縁談が進んでいるところだった。

「春暁八幡鐘」
 アラクマは町で薬種問屋和泉屋の風呂桶を盗むよう声を掛けられる。五日以内盗み出せば三分になるとセンセーに相談を持ちかける。センセー達はぼや騒ぎを起こしてまんまと風呂桶を盗み出す。金を受け取ったオヤマは男の後をつけ商家の若旦那梅太郎と知る。アラクマは盗み出した褒美に女を抱かせると言われる。目隠ししたまま連れられた座敷でアラクマは粗末な半天に荒縄の帯を締め明かりをつけたまま女を抱くように言われる。

「三番倉」
 瀬戸物屋伏見屋の三番倉で番頭の徳太郎と手代の清七が争い、徳太郎は腹を刺され駆けつけた手代に捕まえてくれと叫び倉の中に清七を閉じこめる。しかし岡っ引が来て倉の扉を開けても清七の姿はなかった。

「本所七不思議」
 小舟に狸と首に縄でつながれた新右衛門という高利貸しの死体が見つかる。新右衛門の自宅を訪ねた岡っ引の義平はその朝、足を洗えという声が聞こえたと新右衛門の息子の新助から聞く。その後松の川側へつきでた枝がなくなった松が見つかり狸ばやし、ひとつ提灯の話を聞きつける。

「いのしし屋敷」
 越前屋の養子孝助は、貧乏旗本夏目半九郎が開いているいのしし屋敷と呼ばれる堵場で作った借金の形に妾のお菊を取られる。お菊を救い出せば百両出すとユータ頼まれる。いのしし屋敷に忍び込んだセンセーとマメゾーだったが手傷を負わせられ逃げ帰る。その後孝助が袈裟懸けに切られ殺された姿で発見される。

「心中不忍池」
 不忍池の茶屋で富島町の房吉親分が心中の様相で発見されるが相手の女は老婆に変わっていた。
(ネタバレ)

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防壁'97年刊
 特殊任務にあたる男達が事件を通して男と女の心の真実を見出していくことが共通するテーマとして描かれた短編集。

(防壁)
 警視庁警護課員佐崎康利俊は最大野党の政調会長である鳴川茂則の警護のため神谷剛史警部の指揮下に入ることを命ぜられる。そこには義理の兄大橋誠もいた。神谷はかつて家庭がある身でありながら佐崎の姉と関係を持っていた。鳴川への抗議行動が過激化していた。鳴川の講演会の後銃弾が鳴川を襲う。その盾となって大橋が胸を撃たれる。大橋の見舞いに神谷が訪れている気配があり姉との関係に疑惑を抱く。神谷の休日と鳴川が襲われた日が奇妙な一致をしていた。

(相棒)
 海上保安庁に勤務する長瀬は3年間付き合った田村由美に気持ちが離れていくのを感じ最後に一緒に海へ潜るため伊豆へ出かけた。海中で由美がマスクを払い、見え透いた自殺の演技と感じた長瀬は由美に別れを告げる。その後付き合い始めた亜希子から転職を薦められた頃、輸送船の横転により出動命令が出る。船内で船長を発見し救助するが途中トラブルによりボンベを落としてしまう。

(昔日)
 川崎市の住宅改築現場から不発弾が発見される。陸上自衛隊不発弾処理隊の高坂透は不発弾を覆う土の色に違和感を覚える。
 高坂は10年程前に津田君江と結婚したが仕事のことから些細な諍いが多くなり次第と帰る時間が遅くなり行きつけの飲み屋で麻里子と知り合うことになる。結婚から数年後、君江に離婚を切り出そうとしていた頃、君江からドライブに誘われる。ハンドルを握った君江は対向車に突っ込み衝突は避けられたが病院へ運ばれることとなり、その後離婚する。その君江から再婚したと手紙が届く。
 川崎市近郊では同型の爆弾が出ておらず関西方面が多かった事と土に対する疑問から高坂は土地の所有者手島寛二から話を聞く。元の住宅は昭和45、6年頃当時建設業を営む手島の片腕だった下村が指揮を取り名古屋からの本社ビルの移転と共に建築されたものだった。下村が不発弾を運んだのではという疑惑を持った高坂は名古屋へ向かい、当時を知る相沢と会う。本社移転の頃,会社が造成した住宅地でがけ崩れが起き死者を出したことがあったことを聞き、下村に会いに行く。

(余炎)
 消防士の直井が所属する大泉署管内で連続して5件の不審火が発生していた。
 直井には由希子という付き合っている女性がいたが知らずして同僚の岩本から奪った経緯がありつい最近子供がいることを知り心が揺れ動いていた。
 出火時間が深夜ではないことから子供にまで疑惑の目が向けられた。直井と由希子と娘の久美子で遊園地に出かけるが久美子の態度に同じ体験を持つ直井は25年前の自分を重ねる。そんなとき管内の中学校から出火の知らせが入る。消火作業を終えた直井は現場で久美子と出会う。久美子は「やっぱり同じだった」と直井に言い放ち立ち去る。
 直井は不審火が自分達の隊の当番日に当たる事に気付く。その当番表をリハビリ中の関屋光男が見に来たことを知る。関屋を問い詰める直井に対して明日まで待ってもらえるよう頼まれるが、出火の報が届く。
(ネタバレ)

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闇の底'06年9月刊

 警察捜査の様子と殺人者の様子がカットバックで描かれる作品。犯人が幼女殺人を食い止めようと事件が起きるたびに過去に幼女殺人を犯した者を殺して警告とする。犯人にも溺愛する紗耶という幼い娘がいる。
 犯人探しもアイデアとしては悪くないけどイマイチかな。短編にして一瞬ミスリードしてすぐバレの方がいい気がする。追う者の心の中にもその悪を認めようとする二面性を描こうとしたんだろうけど。乱歩賞受賞作が気に入って期待して読んだんだけどな。冒頭の視点が気になってその後も飛ばして読んじゃった。

(あらすじ)
 小学生の牧本加奈ちゃんが遺体で発見され埼玉県警日高署に捜査本部が置かれる。三枝利幸と長瀬一樹も捜査に加わることになる。長瀬は小学生の時妹の絵美を自分の不注意から殺されたいう過去を持っていた。
 公園のゴミ箱から生首が発見される。一緒に捨てられていた保険証には木村正次と記されていた。記されていた住所を訪ねると首なし死体が浴槽の中から発見され、その腹部にはSと読める傷跡が残されていた。埼玉県警日高署に捜査本部が置かれ藤川管理官の指揮の下村上康平も捜査に加わる。
 警察とマスコミに犯行声明と木村を殺害したシーンを収めたDVDが届く。そこには、子供が殺される事件が起きれば子供を傷つけてきた人間を生贄にすると書かれてあり内藤信雄・木村正次殺害の犯行声明もあり、自らをサンソンと名乗っていた。
 ある日長瀬は所長から呼ばれ坂戸署の応援に行くことになる。藤川が捜査の切り札として呼んだもので、村上と長瀬がコンビとなって捜査に当たることになる。
 行方不明の幼女が死体で見つかった後ビジネスホテルで伊藤昇が殺される。伊藤は加奈ちゃん殺しで警察からマークされていた前科者だった。
 サンソン擁護の空気もある中、長瀬の過去を知ったマスコミに対し「自分の中にもサンソンがいる」と答えてしまう。
(ネタバレ)

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火車'92年7月刊

 ローンの問題もそうだけど、どうやって他人に成りすまして生きていけるのか、それをどうやってあばけるのかのお話。死亡してて届け出がないことによって浮いてる戸籍や住民票があるなら可能だろうね。免許だって紛失したって言って再発行してもらえば写真だって入れ替わるだろうし。この小説でネックとされているのは雇用保険の番号がダブるということ。これも発行する側が調べるのが大変ということでダブったまま発行されている。もっとも普通であれば浮いてる戸籍を探すなんて無理だろうし後は殺してでも作るしかない。
 子供の犬殺しと資産家の経営者殺しの話が挟まれるくらいでずっと「関根彰子」の追跡。この長さであんまり無駄な描写もないから結構詰まってる感じ。
 ただこの作品の最初の部分の視点が気になった。本間の視点で書かれてると思って読み始めていくと本間の行動の主語が「本間は」で表現されている箇所にぶち当たる。本来なら「俺は」とかなんだろうけど。だから最初別の「本間」がいるのかと思った。
 あと、住宅側を向いている球場の照明灯って聞けば大阪の人間かホークスファン(南海ね)ならすぐピンと来るんだろうな(分かっても筋にはあんまり関係ないけど)。

ついでに筋にはあんまり影響しないツッコミどころ
・なんで忙しい弁護士なんて設定にしたんだろ。時間がないって言う割りには日本の信販状況を延々と語ってる。
・換気扇の汚れ落としにガソリンなんか使うのかなぁ。揮発性が高いから危ないんだけど。以前どっかの新聞配達店で火事になったじゃない。それのために買いに行くのも想像できない。

(あらすじ)
 足を銃で撃たれ休職中の刑事本間俊介は妻を亡くし息子の智と二人で暮らしていた。ある日、妻の親戚筋の栗坂和也が訪れる。婚約者の関根彰子が失踪したという。クレジットカードを作る際に彰子がブラックリストに載っており5年前に自己破産していたことが分かった直後だという。
 彰子の足取りを追う本間は彰子の勤務先や自己破産した際に手続きをした弁護士を訪ねる。話を聞くうちに違和感を感じた本間は弁護士に彰子の写真を見せたところ別人だと言い放つ。
 本間は住民票、戸籍を調べるうちに関根彰子の身分を騙ってる別人の疑いが出てき、肉親がいない状況に疑いを持つ。彰子が消えたアパートからアルバムを借りた本間は住宅を写したポラロイド写真を見つける。本物の彰子が弁護士を訪れた時に住んでいたマンションを訪れると、当時彰子が無断で部屋を出ていたことを知る。大家が保管していた遺留品の中からカタログ通販会社「ローズライン」の電話番号の書かれた病院の精算書と墓地広告のパンフレットが見つかる。彰子の足取りを追う内に彰子の母親が階段から落ちて死んだこと、それを見つけたのは若い女だと聞く。彰子の実家のあった宇都宮を訪れた本間は彰子の幼なじみだった本多保と会う。
 ポラロイド写真に写っていた住宅から写した場所が大阪であり、写っていた女性の制服が旅行代理店のものと分かり、彰子が大阪へ研修に来た際に撮ったものではないかと思われた。そのグループ会社に通販会社「ローズライン」もあった。本間はローズラインで「関根彰子」の写真を見せ照会をする。写真を見た管理課の片瀬秀樹からその女は「新城喬子」であることを聞く。ローズラインのシステムから関根彰子のデータを盗んではないのかと問い詰めるが、片瀬はデータセキュリティが厳しくそれが流れることはないと断言する。
(ネタバレ)

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